「衝撃!ニコちゃん赤ちゃんを生む!?」第279回サルシカ隊がいく

投稿日: 2014年10月20日(月)21:04

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8月に高橋さんのお父さんからいただいてきた仔ヤギのニコちゃん。
大好物のカラムシ(雑草)を毎日食べてすくすくと育ってきたのだ。
サルシカの秘密基地にやってきて早2ヶ月。
わんぱくな仔ヤギちゃんは、ゲンキな赤ちゃんを産んだのだ。
いやー、めでたいめでたい。

と、ここでいったん落ち着いたうえで、リアクションしてもらいたい。

「ええええええええええええええええええええええええ!!!!」

まだ足りませんね。

「でぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

ウソじゃないのだ。
仔ヤギだと思っていたニコちゃんがある日、突然赤ちゃんを産み落としたのだ。
あまりに衝撃的すぎて、現実だと受け入れられず、スタッフにも隊員にも一切の口外を禁じた。
Facebookへのアップも禁止!!
だからごく一部の人を除いて、この事実を知らない。

ここから書く話はすべて本当である。
驚くなという方がムリだろうが、まあ出来るうる限り落ち着いて読んでもらいたいのである。

s279-02このあとの事件をまったく知らぬ中谷のおいちゃん(左)と大工のT橋さん(右)

10月17日、金曜日。
サルシカ秘密基地。
仕事のまえに大工のT橋さんがやってきて、11月に予定している秘密基地の工事の打ち合わせが密かに行われていた。
そもそもトイレもキッチンも完成し、「もう秘密基地の工事は終わりだあ!」宣言をしたにもかかわらず、何やらつくろうということ自体が驚きであろう。
が、もっと驚く事件が起きたのである。

午前9時半。
隊長のワタクシは秘密基地内の事務所で原稿を書いていた。
中谷のおいちゃんはウッドデッキで事務作業をしていた。
上出のおいちゃんは基地の下の薪置き場で何やら作業していたのだ。

稲刈りも終わり、冬野菜の植え付けも終え、比較的穏やかな朝であった。

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ワタクシは音楽を聞きながら原稿を書いていたので最初の騒ぎに気付かなかった。
が、ドタドタドタとおじさんが全力で走る音がウッドデッキから響いてきたとき、ただならぬ気配を感じた。
だっておじさんが本気で走るってタダゴトではないのだ。

「た、た、た、隊長〜!! たいへんだ〜!!!!」

中谷のおいちゃんは確かに「た」を3回言った。
ウソだと思ったでしょ。
でもね、人は本気で驚くと、「た、た、た、たいへんだ〜」というふうに必ず3回どもるのだ。
本当なのだ。

そしてガラリと事務所の扉を開けると、目をひん剥き、ハアハアゼエゼエと肩で息をしながら、

「隊長、ニコちゃんが、赤ちゃん生んだ!!!!!」

と、ワタクシのまさに眼前で叫んだのである。

が、ワタクシは冷静だった。
何をバカなと思った。
だってニコちゃんは生まれて数ヶ月でもらってきた仔ヤギちゃんなのだ。
しかも8月にもらったのだから、あれから2ヶ月も経っていない。
そもそもその間、どっかとヤギと「あふん♡」なんて関係になるタイミングなんぞなかったし、そもそも他のヤギといっしょになることもなかったのだ。

が、ありえんと思いながらもワタクシも走った。
さほどに中谷のおいちゃんはコーフンしていた。
本気だった。

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で、薪置き場へいくと、上出のおいちゃんまでもがコーフンして「ちょっとさ、どーなってるんだかさ、信じられないよ」と言いつつ、一方を目でうながした。

そこには、ニコちゃんと明らかにネコとか犬とは違う、しかも血と泥で汚れた生物が存在した。

「うそぉ」とワタクシ。

が、ニコちゃんが産んだのは明らかであった。
ニコちゃんのお尻も血で濡れている。

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中谷「隊長、ニコちゃん、仔ヤギじゃなかったの?」
隊長「いや、仔ヤギだよ、だって中谷さんもいっしょに山から連れてきたじゃん」
中谷「確かに小さかったよなあ」

秘密基地にヤギがやってきた顛末は下記のリンクを読むのだ。
というか、これを読んでいない人は、ちゃんと読んでから次に進んでほしい。

「秘密基地にヤギさんがやってきた!メエメエメエ!」第269回サルシカ隊がいく

上出「仔ヤギが仔ヤギを生むってどういうことなんだよ」
隊長「オレが知りたいよ」
上出「処女懐妊なんてことになったら、それこそ大騒ぎだぞ」

第一発見者の上出さんによると、ニコちゃんが草を食むすぐそばで作業していたところ、急にネコのような鳴き声がしたので、ニコちゃんの様子を見たのだという。

「そしたらさ、血に濡れた小さな生き物に口を寄せてるだろ! すっかりニコちゃんがネコを食べちゃったと思ってさ! もうオレ慌てたぜ!」

どこにネコを食うヤギがいるのか。
が、仔ヤギのニコちゃんが赤ちゃんを生んだという事実のほうが間違いなく受け入れがたい。

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濡れた土の上では赤ちゃんが寒かろうと、稲わらを敷き詰めた。
さぞ喉も乾いているだろうと水も運び、大好きな岩塩も運んだ。
おっさん3人はあたふたと秘密基地と薪置き場を走りまくったのである。

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しかもその間に「ヤギの出産」についてネットで調査。
ヤギの赤ちゃんは生まれて30分もしないうちに立ち上がり、母親の乳を飲むという。
ということは、まだ生まれて間もないということだ。
よろよろと立ち上がろうとするが、すぐに倒れてしまう。
そのうち、ニコちゃんのほうが待ちきれなくなって、傍らの草を食べはじめた。

「ダメだ、ここに置いておいたら赤ちゃんがおっぱい飲めないぞ。エサがまわりにありすぎてニコちゃん誘惑に勝てないんだ! 早く小屋に戻さないと!」

しかも。
ネットの情報では、赤ちゃんが生まれると同時に小屋に放して首ヒモを外さないとダメとあった。
母親の首ヒモが赤ちゃんにからまって死んでしまう危険性があるというのだ。

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ここからのおいちゃんたちの行動は早かった。
ワタクシの自宅の柵を取り外してきて、ヤギ小屋の出入口に取り付けた。
運ぶおっさん、道具を用意するおっさん、取り付けるおっさん。
おっさんたちの連携はまさにファインプレイであった。

柵を付けおえると、そこにもワラを敷き詰める。
水も塩もセット。

「よっしゃ、ニコちゃんと赤ちゃんを運ぶぞ!!!!」

中谷のおいちゃんがバナナの箱に赤ちゃんを入れ、小屋へと運んだ。
ニコちゃんが「めええええええ!」と大声で鳴く。
赤ちゃんを返せ、と叫んでいるのである。
で、ワタクシがニコちゃんの首ヒモを引っ張って走る。
ニコちゃんは箱を追う。
が、すぐにその足が止まった。

「どうした、ニコちゃん!?」

ニコちゃんは大好物の草「カラムシ」を発見し、それを食っていた(笑)。

「草を食ってる場合か!! もう赤ちゃんのことを忘れたのか!!」

必死にカラムシに食いつくニコちゃんを引き離し、小屋へと運んだ。

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なんとか小屋に運び終えた。
15メートルほどの移動であったが、まあ何とか落ち着いているようである。

が、まだ赤ちゃんは立ち上がらず、おっぱいを探し当てることができない。

おじさんたちが3人、小屋の前で立ち尽くしていた。
われわれにできることはもう何もないのだ。
あとは母親のニコちゃんと赤ちゃんに任せるしかないのだ。

「なんかオレ、泣けてきちゃったよ」

中谷のおいちゃんはそう言って潤んだ目を拭った。
上出のおいちゃんも泣きそうだった。
わが娘が子どもを産み、それを励ますジイジの心境だ。

が、娘ニコちゃんは「お父さん、わたし、できちゃったみたい・・・」という告白もなく、ある朝突然に赤ちゃんを産み落としたのだ。
しかも小学生ぐらいだと思い込んでいた娘が!
このジイジたちの驚きをわかってもらえるであろうか。

「オレね、ニコちゃんがオレたちになつかなかった理由がわかったよ。オレたちはひどいことしたよなあ、ニコちゃんの兄弟だと思って引き離してきたあのオスヤギは旦那さんだったんだよ」

ワタクシの言葉を上出さんも中谷さんも神妙に聞いていた。

「それをさあ、無理やり引き離してさあ、しかもタックルを2回もぶちかましてさあ、しかも旦那さんはもう食われちゃったんだよ」

さっきまで泣いていた中谷のおいちゃんはもう泣き笑いになっていた。
そして腹を抱えて笑いはじめた。
いったいワレワレは何をしているのであろうか(笑)。

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やっと赤ちゃんが立ち上がり、ニコちゃんの腹をまさぐっていた。
が、乳首を見つけられない。

「がんばれ、赤ちゃん!」
「もうちょっと動いたれ、ニコちゃん!」

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そしてついに赤ちゃんはニコちゃんの乳首を探し当てた。

「やった〜〜〜!!!!」

3人のおいさんは歓喜した。
そしてまた泣いた。

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われわれに続いてこの衝撃の事実を目撃したのは、用事から戻ってきた大工のT橋さんだった。
ニコちゃんは彼のお父さんにもらったのであるからして、彼にも多大な責任があるのだ。

「ちょっとこれ見て」

ヤギ小屋を覗いたT橋は思わずのけぞっていた。
そして小さな目を精一杯見開いて口をパクパクしていた。

「なんで仔ヤギから赤ちゃんが生まれるんだよ」

明らかにワタクシたちの口調はT橋を責めていた。

「まあ、ウチからもらわれていく時にすでに仕込まれてたんでしょうねぇ・・・・ま、でもよかったじゃないですか、1匹だったのが2匹になって。当たりですよ、これは。ラッキーじゃないですか」

このあと、大工のT橋がボコボコにされたのは言うまでもない。

続いて衝撃の現場を見たのは、ワタクシの妻M子であった。
用事から戻ってきたので、ワタクシはつとめて冷静に「あのね、ニコちゃんが赤ちゃんを生んだ」と言ったのだが、妻M子は眉間にシワを寄せるばかりだったのだ。
で、実際にヤギ小屋をのぞかせると、3歩ほど後ろにフラフラと下がり、

「なにこれ・・・なんで小さいのがいるの??」

と言った。
が、われわれにも説明する言葉が見つからないのだ。

この間までえんえんエサを食い続けるなあと思っていた。
えらく腹がパンパンだなあと思っていた。
でもまさか赤ちゃんがお腹にいるとは思っていなかったので、

「おまえ、ちょっと食い過ぎだぞ!」

などと言いながら乱暴に腹を叩いていたし、
中谷のおいちゃんなんぞは、川の向こうのカラムシを食べさせようとして、ニコちゃんの腹を抱えて川を渡ったりしていたのだ。
まあ本当に何事もなく生まれたものだ。

そしてなにより。
ここまで何にも気付かずにきたわれわれのノーテンキなことよ。

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赤ちゃんヤギはたっぷりとニコちゃんのお乳を飲み、すっかり落ち着いた様子であった。
ニコちゃんの横で赤ちゃんヤギが眠っている。
すやすやと。
目の前の事実は事実として受け入れねばならない。
が、まだ信じられなかった。

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その夜。
この事実をしっているわずかな面々で酒を飲んだ。
朝の慌てた様子、いまだ信じられぬ話を何度もして笑った。

が、しばしの間があると、おいちゃんたちはぼんやりとしていた。
これから赤ちゃんヤギを育てていくのだ。
しかもニコちゃんのおっぱいからは乳が出ている。

いずれは・・・と考えていたことが、唐突に目の前にやってきたのだ。

3日間、みんなにだまっていてごめんなさい。
でも、母子ともに安定しないうちにあまりたくさんの人がやってきたら大変だと思ったのだ。

いま、ニコちゃんも赤ちゃんもすくすくと元気です。
よかったら静かに遊びにきてくださいね。